海外FXの法人化する方法やメリットを解説!法人化の節税メリットなども紹介

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近年、投資や資産運用の手段として人気となっているのが海外FX取引です。

海外FX取引を上手に活用し資産運用できれば、レバレッジによって、多くの利益を得ることが可能であるためです。

しかし、利益を得ることで発生してしまうのが税金です。

もちろん、海外FX取引によって発生した税金に対して、節税する方法があります。

最もシンプルなのは、海外FX取引に使用したお金を経費として計上する方法です。

これにより利益が小さくなるため、支払う税金を抑えることが可能となります。

事務用品や書籍代など、経費として計上できるものには限りがありますが、節税方法としては非常に有効な手段です。

そして、もう1つ節税対策として用いられるものがあり、それが法人化(法人成り)です。

FX取引している人の中には「法人化したほうがお得になる」という話を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。

税金に関しても、法人化することで個人ではできなかった節税対策できます。

もちろん法人化することで得られるメリットは、節税以外にもいくつもありますが、反対にデメリットも存在します。

その両方をしっかりと理解した上で、法人化するかどうか考えることが重要です。

そこで、今回は

・海外FX取引の法人化によるメリット・デメリットとは?

・法人化する方法は?

について知りたい人におすすめの情報を紹介します。

記事の最後には、法人化するべきタイミングについて解説します。

ぜひ最後まで読んで、法人化を検討する参考にしてください。

海外FX取引における法人化とは?

FX取引における法人化とは?

それではまず、海外FXの法人化について確認していきます。

法人とは、「一定の社会的活動を行う組織であり、法律によって人と同じように権利と義務が認められた存在」とあります。

つまり、

FX取引における法人化とは…

法人(社会的活動する組織)を立ち上げて、FX取引すること

これにより、個人のときとは違った恩恵を受けられます。

この恩恵を求めて、法人化を検討する人が多くいるわけです。

では、実際にどんな違いがあるのでしょうか。

詳しく説明していきます。

海外FXにおける法人と個人の違いとは?

海外FXにおける法人と個人の違いとは?

法人化することで個人の時とは違った恩恵を受けられますが、その1つが税金です。

個人で海外FX取引した場合、それにより得た利益は雑所得となり総合課税の対象となります。

しかし法人化した場合には法人税が適用されるため、税率が変わってきます

また法人化することで、FX口座を開設する際に法人口座の開設が可能です。

法人口座を利用することで、節税などの面で個人口座とは違ったメリットを得られます。

では、もう少し詳しく法人と個人の違いを見ていきましょう。

課税区分として法人税が適用される

個人が海外FX取引で得た利益は雑所得という扱いになります。

この雑所得に対しては総合課税が適用され、全所得を合計した金額に対して課税されます。

しかもこの所得税は累進課税方式が採用されており、所得が多ければ多いほど税率が高くなり、最大で45%の税率が課せられてしまいます

一方、法人が得た利益には法人税が適用されます。

法人税は一定税率で、年間所得によって二段階に分けられており、最大で23.2%の課税となります。

(※こちらの税率は2019年4月1日以降に事業を開始した場合で2022年4月現在)

所得税の最大45%と比べると、非常に低くなっています。

この適用される課税区分が、法人と個人の大きな違いの1つです。

所得に対する税率の違いなどについては、後程、この記事内で詳しく説明していきます。

損益通算・損失繰越の有無

法人と個人のもう1つの大きな違いとして「損益通算」「損失繰越」があります。

損益通算とは…

その年に得た利益と、受けてしまった損失を合わせて、相殺できる制度

簡単に言えば、利益が100万円ある一方で損失が120万円あった場合、損益通算すると「100万-120万」となり、20万円の損失となるわけです。

この損益通算は、個人でも法人でもおこなえます。

しかし、この損益通算が利益と損失の種類によってはできないケースも発生します。

これが法人だと、損益通算できる範囲が広がるので、個人に比べて税金面で有利になることケースが多いというメリットがあります。

損失繰越とは…

確定申告で赤字(損失)が出た場合、次の年以降に繰り越せる制度

先ほどのように、20万円の損失が、ある年に発生したとします。

この場合、20万円の損失を次の年の利益から差し引くことが可能です。

次の年に70万円の利益が出て、前の年に20万円の損失があった場合は、「70万-20万」となり、50万円にだけ課税されることになります。

この損失繰越は、個人と法人で繰り越せる期間に差があり、法人の方が長く設定されています。

このように、海外FXを個人として行うか、法人として行うかで違いが発生するのです。

しっかりとその違いを把握しておくことが重要です。

海外FXで法人化する目安はいくらから?

海外FXを利用する上で、法人化することにより多くのメリットが得られます。

ただ、誰でも法人化による恩恵を受けられる訳ではありません。

主に、以下の基準をクリアしている場合に法人化した方が多くの恩恵を受けられます。

1.事業収入が600万円以上の場合

2.損益分岐点として150万円を超える利益が見込める場合

3.課税売上高が1,000万円を超えるタイミング

ここでは、法人化するための目安について詳しく解説します。

1.事業収入が600万円以上の場合

FXの法人口座を開設する大きな目安として、事業収入が600万円以上であるかどうかが挙げられます。

月収に換算すると、60万以上が1つの目安となり、これは個人とは違って法人の場合には法人税と支払わなければならないため、FXの損益だけでなく税金の支払いも念頭に置く必要があります。

法人税の場合、所得税よりも累進性が低い特徴があり、また個人事業主よりも多くの経費項目が存在するのが魅力的です。

例えば、個人でFX取引している場合に経費として計上できなかった項目であっても、法人化すれば計上できるチャンスがあります。

節税効果を十分に発揮できると判断できる場合、法人の方がお得です。

ただ、法人化に適したタイミングは事業の状況などに応じてケースバイケースで異なるので、慎重に判断してください。

2.損益分岐点として150万円を超える利益が見込める場合

法人化する際には、損益分岐点も意識する必要があります。

法人化するタイミングを判断するための損益分岐点は、150万円の利益が目安です。

維持コストと節税額を比較することにより、維持コストよりも節税額が多い場合には法人化を検討する価値があります。

年間で平均して150万円を超える金額が見込めるケースでは、法人にすることを検討すれば、より節税にも繋がり出費を抑えることが可能です。

3.課税売上高が1,000万円を超えるタイミング

課税売上高が1,000万円を超えるタイミングで法人化すると、2年間は消費税免税事業者となれます

個人事業主の場合、2年前の課税売上高が1,000万円を超えたタイミングで消費税課税事業者になる違いがあり、2年前と現在の事業形態が大きなポイントです。

2年前は個人事業主であっても、法人になると事業形態が変化するため、法人1年目は2年前の課税売上高がゼロとなり消費者免税事業者になれるのです。

この違いをうまくいかせば、大きな恩恵を受けられます。

海外FXで法人化した場合の税金はどうなる?

海外FXで法人化した場合の税金はどうなる?

ここでは、その税金の違いについて、より詳しく紹介していきます。

個人の場合と法人の場合に分け、それぞれ税金のシミュレーションもしていきますので参考にしてください。

個人の場合

それではまず、法人化せず個人で海外FX取引した際にかかる税金や税率について確認していきます。

海外FXは雑所得としての総合課税がかかる

海外FX取引を個人で行い、それによって利益を得た場合、その利益は雑所得という扱いになります。

雑所得は総合課税の対象となり、給与所得などの他の収入とFX取引で得た利益の合計所得で税率が決まります

所得税の税率

所得税の税率は7段階に分かれており、所得金額が多いほど税率が高くなる累進課税方式が採用されています。

所得金額  税率  控除額  
195万円未満 5% 0円
195万円以上 ~ 330万円未満 10% 9万7,500円
330万円以上 ~ 695万円未満 20% 42万7,500円
695万円以上 ~ 900万円未満 23% 63万6,000円
900万円以上 ~ 1,800万円未満 33% 153万6,000円
1,800万円以上 ~ 4,000万円未満 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

復興特別所得税

この税金は、東日本大震災の復興に必要な財源の確保をするために設定された税金です。

2013年1月1日から施行されており、もしかすると知らないまま支払っていた人もいるかもしれません。

復興特別所得税では所得税額の2.1%を収めることとなっています

特別措置法による一時的な課税となっており、2037年12月31日までの所得税額が対象です。

住民税の税率

さらに、所得税に加えて住民税も納付しなければなりません。

住民税とは地方税の一種で、地方自治体が私たちに提供している公共サービス(教育、福祉、ごみ処理、公共施設)の費用をまかなうために集められています。

所得割  均等割り 
道府県民税・都民税 4% 3,000円(3,500円)
区市町村民税 6% 1,000円(1,500円)
合計 10% 4,000円(5,000円)

個人の住民税の税率は、道府県民税・都民税(4%)と区市町村民税(6%)を足した合計10%となります。

例えば、所得金額が100万円だった場合は…

道府県民税・都民税が4%の40,000円、区市町村民税が6%の60,000円、合計で10%の10万円になります。

また、住民税には均等割りと呼ばれるものがあります。

均等割りとは、所得金額に関係なく、住民税を収める必要がある人に一律で課せられている税金です。

所得が500万円の人も、1000万円の人も同じ4,000円を納付しなければなりません。

※2014年~2023年までの10年間は、防災施設の財源確保のため、( )内の金額に増額されています。

※住民税は、自治体ごとに追加しているところもあり、今回のデータと異なる場合があります。

法人の場合

では次に、法人で海外FX取引した際にかかる税金や税率を見ていきます。

個人の場合とどのような違いがあるのでしょうか。

法人の実効税率

海外FX取引した際に法人が支払う税金は、法人税・住民税・事業税の3つになります。

この主要な税金についてまとめたものが、表面税率と法定実効税率です。

難しい話になりますが、法人化する上では必要な知識ですので、少しだけこの違いを説明します。

表面税率は、国税庁などが公表している各税の税率をシンプルに合計したものです。

しかし、法人税・住民税・事業税のうち、事業税に関しては「損金(会社が損をして失ったお金)」として参入することが認められています。

この、事業税の損金分を反映する形で計算し直されたものを法定実効税率と言います。

法人が実質的に負担する税金額に近くなるのは法定実効税率ですので、こちらを使って計算します。

この法定実効税率ですが、資本金や所得、事業所のある地域によって金額が変化するのです。

今回は、以下の条件で法定実効税率を計算します。

・東京23区内に住所がある

・資本金は1億円未満(外形標準課税の対象外)

・所得は1000万円の普通法人(住民税と事業税が超過税率の適用対象

この条件で、法定実効税率を計算してみます。

必要となる情報は、財務省総務省東京都主税局のサイトで確認できます。

今回は下の表にまとめてみました。

税金 税率 
法人税率 23.2%
地方法人税率 10.3%(一律)
住民税率(東京都23区) 10.4% (超過税率)
事業税率 7.48%
 事業標準税率 7.0% 
特別法人事業税率 37.0%

この情報を、法定実効税率を求める計算式に当てはめると、以下となります。

{法人税率23.2%×(1+住民税率10.4%+地方法人税率10.3%)+事業税率7.48%+事業税標準税率7.0%×特別法人事業税率37.0%}÷(1+事業税率7.48%+事業税標準税率7.0%×特別法人事業税率37.0%)=0.380724÷1.1007≒0.34589≒0.3459 ⇒ 34.59%

このように計算でき法定実効税率は34.59%と試算しても、これだけではどちらが得なのか判断できません。

法人・個人それぞれの税額シミュレーション

では、実際に個人と法人での税金のシミュレーションします。

今回、税額の計算に使うために以下の条件を用います。

・東京23区内に住所がある

・資本金は1億円未満(外形標準課税の対象外)

・所得は1000万円の普通法人(住民税と事業税が超過税率の適用対象

この情報に基づいて、計算・比較していきます。

個人の場合

ここからは、個人の場合の税金シミュレーションを解説します。

【基本条件】

所得:10,000,000円

所得税率:33.0%

控除額:1,536,000円

基礎控除額:480,000円

※基礎控除とは総所得金額などから差し引く控除の一つ

【所得税】

{( 10,000,000円 -480,000円 )×33% }- 1,536,000円 = 1,605,600円

【復興特別所得税】

1,605,600円×2.1% = 33,717円

【住民税】

( 10,000,000円 - 480,000円 )×10% = 952,000円

税金の合計:2,591,317円

手取り(所得-税金):7,408,683円

上記条件で税額を計算すると、税金の合計は「2,591,317円」、手取りは「7,408,683円」となります。

法人の場合

次は、法人の場合の税金シミュレーションを解説します。

所得:10,000,000円

【法人税】

( 8,000,000円×15%)+( 2,000,000円×23.2% )=1,664,000円

※法人税は800万円までは15%、それ以降の超過分は23.2%の課税となります。

【地方法人税】

1,664,000円×10.3%=171,392円

【住民税】

1,664,000円×10.4% + 70,000円(均等割り)=243,305円

【事業税】

10,000,000円×7.48% = 748,000円

【特別法人事業税】

748,000円×37.0% = 276,760円

税金の合計:3,103,457円

手取り(所得-税金):6,896,543円

個人と法人を比較した結果は、以下の通りです。

・個人の手取り:7,408,683円

・法人の手取り:6,896,543円

以上の結果、法人の方が損をしています。

これだけ見ると、法人化する魅力を感じることはできません

では、法人化はしないほうがいいのでしょうか?

海外FXで法人化する8つのメリット

海外FXで法人化する8つのメリット

同じ所得で計算をしたら、法人化の方が損をしてしまいました。

では、なぜ海外FX取引をしていると「法人化したほうがいい」という話題が出るのでしょうか?

それは、単純な計算の比較だけでは分からないところに法人化のメリットがあるからです。

具体的には、以下のメリットが存在します。

1.法人はかかる税率を下げられる

2.経費計上ができる

3.役員報酬の金額を調整することで節税対策になる

4.事業とFXの損益通算が可能になる

5.10年間の損失繰越が可能になる

6.社会保険への加入が可能になる

7.内部留保を貯めておけば退職金を受け取れる

8.家族への給与の支払いが経費になる

ここでは、海外FXで法人化する8つのメリットを紹介します。

1.法人はかかる税率を下げられる

まず、個人と法人とが払わなければならない最高税率を比較します。

先ほど紹介した通り、個人の所得にかかる税はその金額に応じて、最高45%までです。

一方で、法人にかかる所得税(法人税)は23.2%と最高税率は低くなっています

もちろん、法人が支払う税金は法人税以外にも存在し、実際は法定実効税率で計算されます。

それでも法人税が個人の所得税より最大税率が高くなることはありません。

つまり、「稼いだ金額が大きくなればなるほど、法人の方が税金を抑えられる」ということです。

ある程度の利益が見込める人は、法人化したほうが税率を下げられるので節税効果を高められます。

2.経費計上ができる

法人化したら、積極的に活用したいのがこの経費計上です。

海外FX取引で稼いだお金から、経費を差し引くことで課税対象となる利益を減らせます

個人でも経費計上は可能であり、FXの勉強に使った書籍代・セミナー代、パソコン代、通信費などが該当します。

これが法人とななった場合、以下のように経費の幅が広くなるのです。

・電気代

・家賃

・交通費

・生命保険の掛け金

しっかりと事業に使ったことを説明できれば、ある程度の費用は経費にすることが可能です。

法人にすることで人を雇っているという扱いになり、人や業務に必要なお金を経費計上できるということです。

経費として計上できる幅が広い分、法人の方が利益を薄めやすくなります。

その結果、税率に大きな差がなかったとしても、大幅に納税額を少なくできます。

法人化した際には、この経費計上を上手に活用することが大切です。

詳細は、以下記事で詳しく解説しています。

3.役員報酬の金額を調整することで節税対策になる

法人化において役員報酬による節税は、節税対策の代表的なものの1つです。

1人で会社を運営している場合は、役員報酬は自分の給料となるのです。

この場合、役員報酬は自分で決定でき、うまく設定すれば上手に節税できる重要な会社の経費となります。

役員報酬には所得税がかかり、残った会社のお金には法人税がかかります。

この両方のバランスを上手にとることが重要です。

例えば、法人として1,000万円の利益(経費などの損金はなしとします)を得られるとします。

これをそのままにしておけば、1,000万円に法人税(23.2%)が課税され、税金が232万円かかります。

一方で、役員報酬として自分に200万円支払ったとします。

すると、

200万円×所得税率(10%)- 97,500円(控除)= 102,500円が所得税としてかかります。

残りの会社のお金は、800万円になります。

800万円までは法人税が15%になりますので、800万円×15%= 120万円

2つの税金の合計は1,302,500円です。

役員報酬を支払った方が1,017,500円の節税となります。

役員報酬を数人で分散すると、その分所得税も下がり、それぞれ控除が受けられるためさらに節税できることもあります。

※今回の計算は、経費など様々な要因を考慮していない大雑把な計算になりますので参考程度にしてください。

上手に使えば、大きな節税効果のある役員報酬ですが、注意も必要です。

基本原則として、役員報酬は事業年度内に変更できません。

「一年間でいくらの収益が出るのか」をしっかりと見通したうえで、役員報酬をいくらにするのかを決めるようにしましょう。

4.事業とFXの損益通算が可能になる

「法人と個人の違い」のところでも少し紹介しましたが、損益通算という制度があります。

繰り返しになりますが、損益通算とは、その年に得た利益と、受けてしまった損失を合わせて、相殺できる制度です。

これは個人でも法人でも活用できる制度です。

しかし、個人と法人では、税金の種類(所得税と法人税)が異なるため、損益通算にも違いが発生します。

例を挙げると、FX取引と株取引の両方をおこなったとします。

FX取引で120万円の利益、株取引で100万円の損失があった場合、損益通算は可能でしょうか。

答えは、個人では「不可」、法人なら「可」です。

個人で行った場合、FX取引は雑所得、株式は譲渡所得に区別されます。

この時、雑所得と譲渡所得は種類が異なるため、損益通算ができないのです。

つまり、FX取引で得た利益120万円分の納税しなければなりません。

これが法人であった場合、FX取引で得た利益も、株式で出た損失も、すべて会社の損益と考えひとまとめになります。

すると、FX取引の利益120万円から、株式の損失100万円を引いた20万円分だけ納税すれば問題ありません。

法人であれば損益通算の範囲が広くなるので、大きなメリットの1つと言えます。

5.10年間の損失繰越が可能になる

次は、損失繰越についてです。

こちらも少し話をしましたが、損失繰越とは、確定申告で赤字(損失)が出た場合、次の年以降に繰り越せる制度です。

例えば昨年、300万円の赤字が出で、今年は300万円の黒字が出たとします。

本来は、300万円の黒字ですので、今年はその分の税金を払わなければいけません。

しかし、昨年の300万円の赤字が繰り越されているため相殺されて、課税所得を0円にできます。

損失繰越は個人で3年間なのに対して、法人は10年間繰り越すことが認められています。

1000万円の損失が出た場合

個人では、

繰越1年目 200万円の黒字 → 相殺されて課税所得0円(残り800万円)

繰越2年目 100万円の黒字 → 相殺されて課税所得0円(残り700万円)

繰越3年目 100万円の黒字 → 相殺されて課税所得0円(残り600万円)

  4年目 500万円の黒字 → 個人の損失繰越は3年なので相殺はもうできず、500万円が課税対象。

しかし、これが法人の場合は、

繰越4年目 500万円の黒字 → 相殺されて課税所得0円(残り100万円)

というように、10年間繰越できるため相殺されて課税所得をゼロにできます。

損失はでないことが一番ですが、万が一出てしまったときは、法人の方が損失繰越が10年と長いため、節税効果が高くなります。

6.社会保険への加入が可能になる

法人化することで、社会保険への加入が可能になります。

個人事業主は社会保険に加入することはできずに、国民健康保険と国民年金が対象です。

法人が加入できる社会保険は、健康保険と厚生年金です。

社会保険は国民健康保険と比べると保険料は高くなります。

その為、これをデメリットと考えるケースもありますが、社会保険は厚生年金になるため、将来受け取れる年金額が増加します。

法人化することで社会保険への加入ができ、将来のリスクを減らすことが可能です。

7.内部留保を貯めておけば退職金を受け取れる

海外FXで法人化し、内部留保を貯めておけば退職金が受け取れるというメリットがあります。

内部留保とは…

税金や経費・役員報酬などを引いて残った会社の利益を積み上げたものです。

内部留保は会社の財産なので、これを元手に新しく取引も実行することが可能です。

またこの内部留保をためていき、会社を終えるときの退職金として受け取ることもできます。

「普通に役員報酬でもらえばいいのでは?」

そう思う人もいるかと思いますが、役員報酬と退職金では税金の支払い額が変化します。

同じ1000万円を受ける場合で考えたとします。

役員報酬で受け取ると、1000万円すべてが課税対象です。

しかし退職金として受け取ると半分以上(500万円以上)は非課税です。

勤続年数が長ければ長いほど非課税の部分は大きくなります。

内部保留を貯めておけば、取引資金としても使えますし、退職金として節税した状態でお金を受け取ることが可能です。

8.家族への給与の支払いが経費になる

法人化することで、役員報酬と同様に、給与の支払いも経費計上できます

「でも、なぜ自分一人ではなく、わざわざ家族と分けて払うの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。

実は、1人で高額を受け取るよりも、複数に分けたほうが節税効果が高いからです。

実際に見ていくと、1人で500万円受け取る場合は以下の計算式となります。

500万円×20%(所得税率)-427,500円(控除額)=572,500円(所得税)

2人で500万円(250万円ずつ)受け取る場合は、

250万円×10%(所得税率)-97,500円(控除額)=1人 152,500円(2人で305,000円)

となります。

分かりやすくするために、所得税率と控除額のみで計算しました。

1人で全額受け取るよりも、2人で分けたときの方が 267,000円もお得になりました。

もしもご家族などがいる場合には、給与支払いをして節税してください

ただし、働いていることが大前提であり、節税のためだけに名ばかりの従業員として入れておくことはやめてください。

海外FXで法人化する5つのデメリット

海外FXで法人化する5つのデメリット

法人化することで、個人の海外FX取引では受けられないメリットがたくさんあることをお伝えしました。

しかし、法人化もメリットばかりではなく、以下のようなデメリットがあります。

1.法人設立費用と手間がかかる

2.赤字でも法人住民税7万円を毎年納めなければならない

3.利益を自由に引き出せない

4.少なくても5年に1回は税務調査が実施される

5.海外FXの法人口座は解約に手間がかかる

各デメリットの詳細は、次の通りです。

メリットと比較して、法人化するべきかどうかの参考にしてください。

1.法人設立費用と手間がかかる

思い立ってすぐに法人化できたら楽ですが、会社を作るわけですからそう簡単にはいきません。

たくさんの手間と費用がかかります。

まず会社を作る際には、会社登記が必要になります。

会社登記とは…

商号(社名)や所在地、代表者の氏名・住所、事業目的など会社に関する重要事項を法務局に届け出ること

また、登記する際には登録免許税がかかり、会社の種類によって金額が変わります。

・株式会社 → 資本金の0.7%(15万円に満たない場合は、15万円)

・合同会社 → 資本金の0.7%(6万円に満たない場合は、6万円)

この登記に向けて、様々な準備が必要となります。

①会社の概要を決める

会社の名前やお店の所在地、代表者や事業目的は何なのかなど、会社の概要を決めます

②商号調査や事業目的の適任確認を行う

同じ場所に同じ名前の会社がないか所在地管轄の法務局で確認してください。

法務省のオンライン登記情報検索サービスでも調べられます。

事業目的適任確認は、違法性がないか、明確な事業目的になっているかをチェックされます

③法人用の印鑑を作成する

会社の設立時や設立後に重要となる法人実印を作成します。

同時に、銀行印や角印、ゴム印なども一緒に作っておくと便利ですし、セット割で安くなります

④印鑑証明を取得する

設立が自分一人であれば、自分の印鑑証明1枚で問題ありません

⑤定款を作成して公証役場で認証を受ける

定款とは、会社の基本事項をまとめた規則のことです。

FX取引だけですと、租税回避が疑われますので、ほかの事業も入れられるようにしましょう。

完成したら、公証役場に持参して認証を受けます。(合同会社は不要)

この際、認証費用5万円、謄本交付手数料250円が必要です。

また定款には4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款の場合は不要となります。

⑥出資金を払い込む

定款の認証を受けたら、出資金を発起人名義の口座に払い込む必要があります。

法人名義の口座は、会社の設立後でないと作成できないため、発起人の口座に振り込むことになります。

出資金の払い込みが完了したら、法人実印を押した払い込み証明書を作成します。

ここまで完了すると、会社登記の手続きをおこなえます。

必要な申請書類などを書き、法務局に持ち込むか、郵送、オンラインで申請を行います。

全てをまとめた費用としては、株式会社であれば20~25万円程度、合同会社であれば10~15万円程度です。

法人の恩恵を受けるためには、これだけの手間と費用が必要になりますので、注意してください。

2.赤字でも法人住民税7万円を毎年納めなければならない

この法人住民税ですが、本記事前半の税額シミュレーションの際に一度出てきました。

会社が払う法人税の多くは、会社の利益に応じて課税されるものがほとんどです。

そのため、赤字などで利益がなかった場合には、税額が0円になります

しかし例外なのが、法人住民税です。

利益が0円であったとしても、均等割りの7万円は毎年必ず納めなければなりません。

節税を目的に無計画に法人化してしまうと、痛い出費になってしまいます。

3.利益を自由に引き出せない

会社で得た利益は、会社のものとなります。

それがいくら自分の会社であったとしても、法人口座にある資金を好き勝手に動かすことはできません。

内部留保も会社の資金に当たりますので、自由に使せません。

事業で必要な場合に、必要な分だけ使えます。

役員報酬として得たお金は個人のお金なので自由に使えるのです。

しかし、記事内でも解説した通り、役員報酬の金額は事業年度内では原則変更禁止です。

「FXで利益がたくさん出た!自由に使いたいから、来月の役員報酬を増やそう!」ということは行えません。

利益が出たとしても、すぐに自由に使えるわけではありませんので気を付けましょう。

4.少なくても5年に1回は税務調査が実施される

法人化すると、切っても切れないものとして税務調査があります。

個人事業主の場合は、大きな利益が出たのちに調査が入ることがあります。

しかし法人は、利益とは関係なく、最低でも5年に1度は税務調査が行われます。

税務調査では、法人から申告があった内容が正しいかどうか、帳簿などをもとにチェックされていきます。

しっかりと準備して対応すれば大丈夫ですが、ミスが発覚した場合には指導を受けることがあります。

そんなときには、しっかりと話を聞き、確認をして、間違っているところを訂正して申告しなおせばいいのです。

税務調査がいつ入ってもいいようにしっかりと準備してください

名ばかり従業員を置いて、節税目的のためだけの法人化ではないのかと疑われないよう不正は絶対やめてください。

5.海外FXの法人口座は解約に手間がかかる

個人口座を解約する場合、残高を0円にしたり決済しておいたりと、必要なことはありますが、そこまで手間はかかりません。

解約したい場合には、HPにあるフォームやメール、電話で必要事項を伝えて解約申請すれば問題ありません。

あとは数日待てば解約できますが、法人口座では時間がかかります。

法人口座を開設する際には、個人口座よりも多くの書類と手間が必要です。

そして、それは解約時にも必要となります。

連絡1つで解約できる個人口座とは違い、多くの手間がかかることを知っておいてください。

海外FXで法人化する際の3つの注意点

海外FXで法人化する際の3つの注意点

法人化に対しての興味がある方でも、簡単に法人化できる訳ではありません。

ここでは、海外FX取引で法人化する際の3つの注意点を紹介します。

1.本店所在地を設定できるか

2.勤務先が副業を禁止しているかどうかを確認する

3.税理士費用を払えるか

それでは1つずつ解説します。

1.本店所在地を設定できるか

会社登記するときに「本店所在地を設定」する必要があります。

特に何もない場合は、ほとんどの人が所在地を自宅に設定します。

しかし後々、事業展開・拡大をおこない、セミナーなどを開催する立場になったとします。

そのとき所在地が自宅になっていると、受講希望者の中には疑問や不安を持つ人も出てくる可能性があります。

本店所在地は、登記した後でも変更は可能ですが追加で費用がかかるのです。

将来、事業を拡大させようと考えているなら、レンタルオフィスなどを借りるのも1つです。

その際は、オフィスとして使用するのに向いているかどうか(許可などを含めて)、しっかりと確認してください。

2.勤務先が副業を禁止しているかどうかを確認する

現在、法人化を検討している人の中には、会社や工場などに勤務している人が多いのではないでしょうか。

みなさんが勤務している会社などには、労働条件や職場でのルールなどが書かれた就業規則が存在します。

この就業規則で副業や兼業が禁止されていないかどうかを確認する必要があります。

個人で行っていると、副業をあまり表に出さずに行うことも可能ですが、法人になると稼ぎがばれやすくなります。

就業規則を確認して、法人化しても問題ないかしっかりと確認してください

3.税理士費用を払えるか

無事に法人化できたら、税理士を雇うことをおすすめします。

税理士は、税金のプロであり法人の確定申告は非常に複雑かつ手間と時間もかかりがちですが、税理士を雇うにもお金はかかります。

しかし、税理士に依頼すれば確定申告のために割かなければいけない時間を、FX取引に回せます。

また税理士を雇うことで脱税の心配もなくなり、税務調査も楽になります。

節税に対するアドバイスを受けられるので、税理士費用は確保してください。

海外FXで法人口座を開設する手順

海外FXで法人口座を開設する手順

海外FXを法人で行う際には、法人口座が使用できます。

法人口座を使用することで、所得税ではなく法人税になるなどのメリットを受けられます。

ここでは、海外FXの法人口座の開設手順について解説します。

ステップ①法人を設立する

法人口座を開設するには法人でなければなりません。

おすすめは、資本金が1円から設立でき、社会的に信用度の高い株式会社です。

株式会社で会社登記する場合は、ほかの会社登記より少し高く、全体で25万円ほどかかります。

本記事で紹介したメリットとデメリットを比較して、法人化するか検討してください。

ステップ②海外FX業者で法人口座を開設する

会社登記が終わったら、法人口座を開設します。

海外FX業者によっては、法人口座の開設ができない場合もありますので、確認してください。

今回は、法人口座開設が可能なAXIORYを例として使用します。

まずは、トップページの口座開設をクリックします。

AXIORY 法人口座

出展:AXIORY

次のページで【法人口座】にチェックを入れ【リアル口座を開設】をクリックします。

AXIORY 法人口座

出展:AXIORY

法人口座開設フォームのページに変わります。

契約条件の確認をした後、ボックスにチェックを入れて「次に進む」をクリックします。

AXIORY 法人口座

出展:AXIORY

次のページでは、基本情報を登録します。

会社の名前・法人種別・登録番号・本店所在地・連絡先などの必要な情報を入力して「次に進む」をクリックします。

AXIORY 法人口座

AXIORY 法人口座

AXIORY 法人口座

出展:AXIORY

次のページでは取締役情報の登録になります。

まず、「取締役の人数」を選択後、必要情報を入力して「次に進む」をクリックします。

AXIORY 法人口座

AXIORY 法人口座

出展:AXIORY

次は「財務状況」や「投資経験」についての質問になります。

必要事項を記入・選択し「次に進む」をクリックします。

AXIORY 法人口座

AXIORY 法人口座

AXIORY 法人口座

出展:AXIORY

FATCAに関する質問が表示されますので「はいorいいえ」の当てはまるほうにチェックを入れて「次に進む」をクリックします。

AXIORY 法人口座

出展:AXIORY

ステップ③必要書類を提出する

会社情報や取引経験など必要な情報の入力が終わったら、必要書類の提出が必要です。

必要書類の提出は、口座開設ページから行えますので、こちらも実際の画像で紹介します。

最初に書類の提出のタイミングを聞かれ、「今提出する」にチェックを入れると、確認書類の情報が表示されます。

※あとで提出するにチェックを入れた場合は、書類の提出が完了するまでは口座開設できません。

①本人確認書類

AXIORY 法人口座 必要書類

出展:AXIORY

②現住所確認書類

AXIORY 法人口座 必要書類

出展:AXIORY

③各種法人関係必要書類

AXIORY 法人口座 必要書類

出展:AXIORY

④グループ構成

AXIORY 法人口座 必要書類

出展:AXIORY

これらが口座開設に必要な書類となります。

画像をアップロードすることですべての書類の提出がすぐにできます。

登録する前に必要な書類を確認し、画像データなどで準備してください。

ステップ④法人口座の開設完了!取引を始める

長かった手続き関係も、法人口座への必要書類の提出と審査が終われば完了です。

ついに、法人口座の開設になります。

今までの経験をもとに、新たな海外FX取引を楽しんでください。

海外FXで法人化するべきタイミングとは?

海外FXで法人化するべきタイミングとは?

法人化の最大の目的は、法人化することで個人にはできない節税対策を実施し、より大きな利益を生み出すことです。

そのため、法人化するタイミングとして年収が大きなポイントとなります。

その目安となるのが年収800万円です。

所得税と法人税だけを考えた場合、800万円程度を境に法人税の方が安くなり始めます

しかし、一概に800万円と言うことはできません。

法人の方が経費計上の幅が広いため、多くの経費を計上することで節税ができるからです。

そのため、もっと低い年収でも得になる場合もあります。

FX取引は確実性が低く、年収が安定しません。

そのため、5年程度、安定した金額を稼げるようになってきてから法人化することをおすすめします。

年収600万円を超えたあたりから法人化を意識し検討し始めてみるといいでしょう。

また税理士に事前に相談するのも非常に有効な手段です。

無料で相談会を開いている事務所もありますので、自分にとってベストなタイミングを探してみてください。

まとめ

まとめ

大きな節税効果があるため、多くの人が検討する法人化です。

今回は、海外FX取引において個人と法人ではどのような違いがあるのかについて紹介しました。

法人化におけるメリットとデメリットは、以下の通りです。

法人化のメリット

・法人の方が、かかる税率を下げられる

・経費計上の幅が個人よりも格段に広い

・役員報酬を上手に使うと節税対策になる

・事業とFXの損益通算が可能

・損失繰越が10年間と個人よりも長い

・社会保険への加入ができる

・内部留保を貯めて退職金を受け取ると節税になる

・家族への給与支払いをすることでより節税できる

 

法人化のデメリット

・法人設立費用と手間がかかる

・赤字でも法人住民税の7万円は毎年払わないといけない

・利益を自由に使えない

・少なくとも5年に1回は税務調査が実施される

・海外FXの法人口座は解約に手間がかかる

これらをしっかりと理解し、比較することが重要です。

記事の後半には、法人口座の開設手順と法人化のタイミングについても解説しました。

今回の記事で海外FX取引の法人化を検討する参考にしてください。